食品衛生法の公定法で使う培地は何か
日本の食品微生物検査で「公定法」と呼ばれるのは、食品衛生法に基づく「食品、添加物等の規格基準」(昭和 34 年厚生省告示第 370 号)の各条に定められた試験法と、厚生労働省(現在は消費者庁所管)の通知で示された試験法です。氷菓・冷凍食品・清涼飲料水・魚肉ねり製品・ゆでだこ・生食用鮮魚介類などの各条に、細菌数、大腸菌群、E. coli、腸炎ビブリオの試験法が培地名と培養条件つきで書かれており、食肉製品のサルモネラ属菌と黄色ブドウ球菌は平成 27 年の通知(食安発 0729 第 4 号)で ISO 整合の試験法に改められました。日常の品質管理では、これらに加えて食品衛生検査指針(日本食品衛生協会)の記載が参照されます。
この記事は、各条・通知の原文に書かれている培地名を、STBIO が台湾・新北市の自社工場(ISO 22000 認証)で製造する乾燥培地と対応させたものです。はじめに三点。
- 規格基準・通知が定めるのは試験法と培地の処方であり、培地ブランドを認証するものではありません。 「厚労省認定培地」というものは存在せず、検査室が標準菌株で性能を確認して採用します(ISO 11133 の考え方)。STBIO はロットごとに試験成績書(COA)と培養性能データを添付し、サンプルをご提供します。
- 「基礎培地」は方法に従って添加物を加えるものです。 Baird-Parker 寒天培地は亜テルル酸カリウムと卵黄液、3 % 卵黄加マンニット食塩寒天培地は卵黄液を加えます。本記事は基礎培地の対応のみを示します。
- 現行の告示・通知の原文に従ってください。 各条の最新版は消費者庁の各条ページで確認できます。
各製品ページには「日本の公定法」欄があり、その培地がどの試験法のどの工程で使われるかを表示しています。規格・公定法から培地を探すからも方法ごとの製品一覧に入れます。
細菌数(標準平板培養法)
氷菓・冷凍食品・清涼飲料水などの各条:検液と 43〜45 °C に保った標準寒天培養基を混釈し、凝固後に倒置して 35 °C(± 1 °C)で 48 ± 3 時間培養して計数します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 計数平板 | 標準寒天培養基(標準寒天培地) | Plate Count Agar、ハラール版 Plate Count Agar H |
大腸菌群(デソキシコーレイト寒天培養基法)
氷菓・冷凍食品の各条:検液とデソキシコーレイト寒天培養基を混釈し 35 °C で 20 ± 2 時間培養、暗赤色の集落を推定陽性とし、乳糖ブイヨン発酵管と E.M.B. 培養基、寒天斜面で確認します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 推定(混釈平板) | デソキシコーレイト寒天培養基 | Desoxycholate Agar、ハラール版 Desoxycholate Agar H |
| 確認 | 乳糖ブイヨン発酵管 | Lactose Broth |
| 確認 | E.M.B. 培養基 | EMB Agar |
| 確認 | 寒天斜面(普通寒天) | Nutrient Agar |
大腸菌群(BGLB 発酵管法)
魚肉ねり製品・乳等・食肉製品(平成 27 年通知):倍濃度 BGLB 発酵管 3 本に試料液 10 mL ずつを接種して 35 °C で 48 ± 3 時間培養、産ガス管を E.M.B. 培地に塗抹し、定型集落を乳糖ブイヨン発酵管と寒天斜面に移植して確認します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 推定 | 倍濃度 BGLB 発酵管 | Brilliant Green Bile Broth 2% |
| 分離 | E.M.B. 培地 | EMB Agar |
| 確認 | 乳糖ブイヨン発酵管、寒天斜面 | Lactose Broth、Nutrient Agar |
E. coli(EC 発酵管法)
食肉製品(平成 27 年通知)、加熱済みの弁当・惣菜など:試料液を接種した EC 発酵管を 44.5 ± 0.2 °C で 24 ± 2 時間培養し、産ガスを認めた管から E.M.B. 培地に塗抹、定型集落を乳糖ブイヨン発酵管に移植し鏡検で確認します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 推定(44.5 °C) | EC 発酵管(EC 培地) | EC Broth、ハラール版 EC Broth H |
| 分離 | E.M.B. 培地 | EMB Agar |
| 確認 | 乳糖ブイヨン発酵管 | Lactose Broth |
サルモネラ属菌(食肉製品、平成 27 年通知 別添 1)
緩衝ペプトン水で前増菌、RV 培地と TT 培地で選択増菌、硫化水素産生で判定する分離培地(MLCB・DHL・XLD から 1 種)と産生によらず判定する培地(BGS・SM2 から 1 種)に塗抹、疑わしい集落 3 個を TSI 寒天培地と LIM 培地に接種して確認し、血清学的に同定します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 前増菌 | 緩衝ペプトン水(BPW) | Buffered Peptone Water H |
| 分離 | XLD 寒天培地 | Xylose Lysine Deoxycholate Agar |
| 確認 | TSI 寒天培地 | Triple Sugar Iron Agar |
| 生化学性状 | シモンズクエン酸ナトリウム培地 | Simmons Citrate Agar |
RV 培地、TT 培地、MLCB・DHL、LIM 培地は現在のラインナップにありません。STBIO の MKTTn は ISO 6579-1 のテトラチオン酸塩培地であり、通知の TT 培地とは処方が異なります。
黄色ブドウ球菌(平成 27 年通知 別添 2)
ISO 6888-1 に準じ、亜テルル酸カリウム溶液と卵黄液を加えた Baird-Parker 寒天培地に塗抹して計数します。従来から広く行われている 3 % 卵黄加マンニット食塩寒天培地による試験も同等に扱われます。疑わしい集落を非選択平板で純化し、コアグラーゼ試験で確認します。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 計数平板(基礎培地) | Baird-Parker 寒天培地:基礎培地に亜テルル酸カリウム溶液と卵黄液を添加 | Baird Parker Agar Base、ハラール版 Baird Parker Agar Base H |
| 計数平板(基礎培地) | 3 % 卵黄加マンニット食塩寒天培地:基礎培地に 30 % 卵黄液を添加 | Mannitol Salt Agar、ハラール版 Mannitol Salt Agar H |
| 純化 | 非選択平板培地 | Tryptic Soy Agar |
| コアグラーゼ試験前培養 | BHI ブロス | Brain Heart Infusion Broth |
腸炎ビブリオ
ゆでだこ・ゆでがにの各条:試料を TCBS 寒天培地に塗抹し 37 °C で一夜培養、培地上の腸炎ビブリオを判定します。生食用鮮魚介類は、アルカリペプトン水で増菌する最確数法です。
| 工程 | 原文の培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 分離 | TCBS 寒天培地 | TCBS Agar |
| 増菌(最確数法) | アルカリペプトン水 | Alkaline Peptone Water |
カビ・酵母
漬物の衛生規範や製造区域のモニタリングでは、ポテト・デキストロース寒天培地で 25 °C・5 日間培養して計数します。
| 工程 | 培地名 | STBIO 製品 |
|---|---|---|
| 計数平板 | ポテト・デキストロース寒天培地 | Potato Dextrose Agar H |
乳酸菌数(乳等省令)
発酵乳・乳酸菌飲料の乳酸菌数は乳等省令の試験法(BCP 加プレートカウント寒天培地)によります。対応する乾燥培地は現在ありませんが、乳酸菌の培養・計数用に Lactobacilli MRS Agar(食品グレード・ハラール版 Lactobacilli MRS Agar Food Grade)をご用意しています。
よくある質問
輸入ブランドから台湾製の培地に替えると、検査結果は変わりますか。 規格基準・通知が定めるのは処方であり、同じ標準処方であれば製造者を問いません。差が出るのは原料のグレードとロット間の均一性です。切り替え時は ISO 11133 の考え方で標準菌株を用いた並行比較(計数用培地は生産性と集落形態、選択培地は選択性と鑑別反応)を行い、記録を残してから採用してください。STBIO はサンプル、ロットごとの COA、培養性能データをご提供します。手順はセカンドソースの検証に、BD Difco・Oxoid・Merck との対応はブランド対照表にあります。
食品衛生検査指針の方法と ISO の方法では培地が違いますか。 サルモネラ属菌と黄色ブドウ球菌の公定法は 2015 年の通知で ISO 整合の処方に改められました。大腸菌群・E. coli は日本独自の発酵管法(BGLB・EC・乳糖ブイヨン)が残っており、ISO 法(VRBL、TBX)とは培地が異なります。輸出向けの検証も行う検査室は両方を備えておく必要があります。
少量で購入できますか。 各製品ページから見積り依頼に追加できます。初めてお使いの場合はサンプル請求をご利用ください。日本語の技術データシート(TDS)はご要望に応じてご用意します。
